Shrink Fのブログ

精神科開業医が日々思うこと 〜あまり仕事とは関係ない〜

魚取りのマナー 〜長く楽しむために〜

和歌山の海岸線をドライブしていると、おそらく日本中どこでもそうだろうけれど、必ずといって良いほど海への降り口の所には、エビ、貝など漁業権の対象となるような生物を採ってはいけないと書いた看板を目にします。磯遊びの盛んなシーズンともなれば車が回ってきてマイクで忠告したり、場所によっては望遠鏡で監視しているところもあります。「見つかるとやばいから、エビや貝を採ってはいけない。」というのは、防犯カメラを設置しているから万引きしてはいけないというのと同じレベルの話で、エビや貝はを採らないというのは採集家の基本です。

魚採りへ磯に行くと、貝などを採っている地元の漁業組合の人と出会ったりしますが、必ず挨拶はしたいものです。私の場合は、小さい子供をつれていることもあって、小さな魚を採りにきたと言えば、快く挨拶を返してくれる事が多く、「あそこで綺麗な魚見たよ。」と教えてくれるおじさんも出会った事があります。しかし、どこでも魚採りにいった人を温く迎えてくれる訳ではありません。

貝などの密猟者の多い磯などでは、やはり警戒され、せっかくの楽しみで海へ来ても気分が悪くなることもあります。しかし地元の人が、生活を脅かす密猟者に過敏になっていても当然の話ではあります。まずは我々が絶対に漁業権の対象になっている貝、エビなどの生物を一つでも採らないこと、そして緊張度の高い磯での魚採りはなるべく避けることを心がけたいものです。気持ちよく魚採りを楽しむためには最低限のマナーだと思います。

また、採る魚が減らないように、我々が長く魚採りを楽しめるように、一人一人心がけなければならないこともあります。二酸化炭素削減のために頑張るとかよりも、もっと直接的なことです。それは魚の住処を壊さないことです。

魚の住処と言えばまずサンゴ。サンゴは海の中の森のような存在であり、我々が採りたいと思うような魚を初め、海の生物を育む母体であります。枝サンゴやテーブルサンゴの間にはしばしば美しい魚が見られ、どうしても採りたくなります。しかし、それを捕まえるためにサンゴを崩したりするのは、住処を壊し、自らの手で二度と魚が寄り付かない荒廃ポイントへと変えてしまっているのです。

それはサンゴだけではなく、岩棚やライブロック、転石一つにしても同じです。私のよく行く大きな潮溜まりでもヤッコなどはよく入るポイントがありましたが、岩が崩れてしまってからは閑散とした魚の少ない潮溜まりになってしまいました。岩棚を崩さない、元に戻せないような大きな石などは動かさないようにすることが、末永くそのポイントで魚採りを楽しむために大事なことであると思います。

また、イソギンチャクなどの無脊椎動物についても同じです。住処がなくなってはクマノミやミツボシクロスズメダイなどの魚が見られなくなります。

それと直接住処を壊すという破壊的な方法ではないにしても、自分の飼育の腕前には謙虚になる事も大事でしょう。私も反省する所が多いのですが、飼える見込みのある分だけ持ってかえって、後は写真におさめてリリース。当たり前ですが、魚の減らない方法です。

魚を採ることも、理屈で言えば生態系を壊していることかもしれませんが、謙虚に自然から分けてもらうという気持ちで楽しめたらと思います。自然が再生できないほど根こそぎな事をするのは、自らの手で確実に魚を減らしているようなものです。

魚採りという自然相手のすばらしい趣味を長く楽しむために....