Shrink Fのブログ

精神科開業医が日々思うこと 〜あまり仕事とは関係ない〜

再考 ソラスズメ 素人受け、No.1

海水魚を飼い始めた1999年。当時地域振興券で買った小さな水槽に入れた、同じくホームセンターで買った色とりどりの海水魚は瞬く間に全滅した。一旦海水魚は諦めたが、世界の海水魚カタログで見た「尾関さん」の水槽の美しさに感銘し、家族の賛同も得られそうなので本格的にヤル気になった。

ホームセンターで90センチのアクリル水槽を購入し、箕島駅前の海水魚ショップ、アクアパルで手ほどきを受けた。魚を飼うには「生物的な」ろ過システムを作ることが大事であるということを知ったのである。水をきれいにする石とかを水槽に入れるだけでは魚は飼えないのである。

ろ過菌の定着のために波止場で釣ったベラを水槽に入れた。あまり旨くないでそれまでは釣れても迷惑に思っていたベラも、水槽に入れてみると案外きれいな魚だなあとそのときは思った。

そんな折の我が家の恒例の白浜旅行。いつもは白良浜海水浴場で泳ぐだけであったが、やっぱりその年もそれは同じであった。海水浴場は白い砂浜であるが迷惑な岩が所々にある。何気なく浮かびながら迷惑岩を眺めているとそこに恐ろしく美しい青い小さな魚を発見した。後で名前を調べてわかったのであるが1cmほどのソラスズメであった。当然ベラの比ではなかった。

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何かの役に立つかもしれないからと、たまたま持ってきた小魚ネットでガンガゼの棘の中に逃げ込んだ所をガンガゼごと網に入れてつかまえた。初めて網で採った魚であった。そしてその夏はソラスズメの美しさに取り付かれ砂浜を探した。磯に行けばたくさん居ることをその当時は知らなかった。

有名な産湯海水浴場や由良町の小さな海水浴場。見当違いな場所であったが迷惑岩を探せばソラスズメは居た。波止場近くではチョウチョウウオやハタタテダイも泳いでいたが当時はソラスズメほどの魅力はなかった。

しかし、ソラスズメ熱もすぐに冷めてしまった。海の中では青く光るソラスズメも採ってバケツに入れたら黒ずんでしまう。手品のようである。水槽に入れても黒いのである。それでも綺麗ではあるが海の中にいる時の色を知っているからがっかりする。「なあんや綺麗と思ってつかまえたら汚いやんけ。こんなん要らんわ。」と捕まったら黒ずむ能力を持つソラスズメだけが人間の手から逃れて自然淘汰されずにきたのではなかろうか。いや、そんなはずはない。

2004年は台風が多く、不漁の年であった。台風後のタイドプールには小さなゾラスズメだけがやたらと目に付いた。捕まえる魚がないのでソラスズメをたくさん採った。ソラスズメは採るのは簡単だ。逃げる場所と言えばたいてい石の下。でもすぐ出てくる。子供も調子にのってたくさん採ってくれる。10匹くらい採ると、「もうこれ以上採るなよ。」と子供に言うが、それでも採ってくる。昔は採ったら逃がしたらアカンと言った子供も、「別に要らんかったら逃がしてもいいで。」と言ってる。余裕をかませるほど子供の中でもポピュラーな魚になってしまっている。

ソラスズメの綺麗な青は、捕まえようとすると黒ずむのである。警戒したとき変化するようである。ということは、警戒を解けば元の綺麗な青い色に戻るはず。家の水槽でも、できるだけ、ソラスズメが落ち着けるように環境を整えれば、あの輝く青い色を拝むことができるのである。

まず考えるのは水質である。
ミドリイシが育つほどの水なら文句はあるまい。ソラスズメ如きには贅沢じゃという感も否めないが大型ベルリン水槽に思い切って小さなソラスズメを入れてみた。しかし、あんまりよろしくない。やはり輝く青には戻らないのである。3匹ほど入れてもうやめた。一度入れてしまうとライブロックやサンゴに陰に隠れてしまい、まず取り出せないのである。海で採るより数倍難しい。残りの十数匹もすべて180センチベルリン水槽に投げ入れると言う酔狂なことはできず、(一瞬はああ綺麗なあと思えるかもしれないが、直後にはきっと後悔に変わる)結局90センチ魚水槽に放った。

この90センチ魚水槽はオーバーフローの一般的なろ過システムで、見栄え重視のため底には薄くパウダーのサンゴ砂を敷き、チョウチョウウオにも対応できるサンゴ、イソギンチャクを入れ、ライブロックで岩組みして自然な感じに仕上げてある。その水槽にソラスズメを放つと黒ずんだ色が急に青く戻ったのである。一匹ずつ放り込むと仲間に出会って安心したかのように次々と見事に色が戻る。これは気持ちよい。「今年はソラスズメで行く。」とさえ思えた。
ひとまず、水質は第一ではなかったのである。

水質や水流、広さ、複雑な岩組みやサンゴなど、すべての条件はベルリンの方がより海には近いはずなのにソラスズメは安心できなかった。90センチ水槽が大型ベルリンよりよいと思えた点は、仲間の存在を十分認識できるくらいの比較的小さなスペースの中に沢山のソラスズメが入ったことである。他にも、考慮すべき問題は山ほどあるが、とりあえず結論。

ソラスズメは、沢山で飼うのが美しい。家に来た大人も子供も感銘すること間違いなし。」