Shrink Fのブログ

精神科開業医が日々思うこと 〜あまり仕事とは関係ない〜

ミノカサゴの餌付け 〜危険な魚を手懐ける〜

キリンミノカサゴ(体長3cm)

 

刺されるとマジに痛いというよりヤバイくらいに恐ろしい、ミノカサゴ。優雅なヒレの先一本一本に猛毒のトゲがあります。これに刺されたら恐ろしいほどの痛みがあり、死ぬこともあるといいます。もし、刺されたら、オシッコかけても無効です。当然ツバでもウン●塗っても効果ありません。この毒素のたんぱく質の構造が熱で変性するので熱めのお湯につけると効果があるといいますが、どこまで我慢できるか。我慢しすぎて、自分の皮膚が熱で変性してしまっては洒落になりません。

ミノカサゴ南紀の海では、珍しい魚ではありません。浅い磯場や潮溜まりなどでも時々見かけますが、岩陰や岩肌にじっとしているのでなかなか見つけにくく、急に目の前にミノカサゴが現れたりして、ウワッと驚いてしまいます。毒を持つ魚らしく、「いつでもかかってこいやー。」と悠然と構えています。自然界では網で捕らえにくるような天敵も居ないので無理はないでしょうが、そこが狙い目。見つけたら簡単に捕まえられます。ただ、あまりに余裕かましすぎて、岩肌でじっとしているんやったら後回しにしようかと思って放っておくと居なくなります。テリトリーがないのでしょうか、その辺が他の魚と違うところで注意が必要です。

 

 ミノカサゴ(体長8センチ) 鰭の大きなミノカサゴはたいへん優雅に泳ぎ、見ごたえのある魚です。映画「裸のガンを持つ男」の中でも、たいへん高価な「日本の闘魚」として登場していました。その水槽にドレビン警部が手を突っ込んで、スッポンのように指を噛まれたような感じで喰い付かれ、振り回すというワンシーンがありました。映画では一匹、○十万円という高価なことを言っていましたが、実際に日本のショップでは3000円程度です。それに怖いのは噛まれることではなく鰭の先の針なのです。

 

この優雅なミノカサゴを水槽で飼うには刺されないための細心の注意ともう一つ、餌付けの問題があります。大きな口を持つ魚食性のこの魚は生きた小魚や小エビにしか興味を示さず、いきなり人工餌は食べません。偶然を期待して、餌を水流に乗せてミノカサゴの近くに運びますが、なかなかパクリッとやってくれません。そのために当初はイソスジエビなどを餌として確保する必要があります。あの、潮溜まりでいる小さなエビです。だいたいどこの磯へ行っても看板に「漁業関係者以外、貝、エビ採るな。」って書いていますが、餌になるイソスジエビを採っていて、怒られたことはありません。怒られないということは、食っても旨くなく、売り物にはならないのだろうと思いますが、知り合いは油で揚げて食べたら旨かったと言ってました。そういえば中学時代に友人がザリガニ食べたという話も懐かしくなります。たいていの生き物は食べられそうですが、毒や寄生虫などのために恐ろしいことになったりするので、むやみに食べず、よく調べることが大切です。ここで出てくる知り合いや友人は私自身ではありませんので念のため。

餌付けの話に戻りますが、餌採りも夏や秋のうちは苦になりません。魚採りに行ったついでに採れますから。11月頃になって寒くなってくると普通は海から足が遠のいてしまうので、餌の確保が難しくなり、真剣にミノカサゴの餌付けを考えざるをえなくなります。そこで餌付けについていろいろなその道のプロに尋ねてみました。

職場の鮎釣り名人の看護師さんの話。
ミノカサゴはガシラみたいなもんやから魚の切り身がええんと違いますか。」

アクアパル(和歌山有田のショップ)さんによれば、「水流を上手く利用すること」。クリル(乾燥エビ)をうまく水流に乗せて、一度でも食べてくれたら大丈夫。そのためのにはできるだけ小さい水槽を使い、そこに注ぎ落ちる水の動きに餌を乗せることで餌が上手く上下運動を繰り返せばバッチリということでした。

トピック(田辺のショップ)さんでは、餌付け棒なる物を見せていただき、半分に千切ったクリルを細い針金の先にチョコッと引っ掛けてミノカサゴを餌付ける様を実演してくださいました。そのときのコツはライブロックなどの岩に餌を沿わせるようにして動かすことだそうです。

私の場合、トピックさん直伝の餌付け棒(注)を使用し、千切ったクリルを引っ付けてやってみましたが、最初は見事に無視されました。今度は釣り餌用の小さな冷凍エビを釣具屋で購入しやってみたらうまくいきました。数日後には餌を針金にセッティングしている段階でミノカサゴが慌しくなる様子が観察され、こういった様子を見ていると、ミノカサゴは餌の動きだけでなく、餌の形も認識しているのだと感じました。こうして、一旦冷凍餌で餌付いてしまえば、まもなくクリルも食べてくれるようになり、人口餌への移行もスムーズに行きました。人工餌は大きなものがいいでしょう。私はアロワナスティックを使用しました。

 


アジ釣りなどに使用する、サシアミ。150円也。
注:冷凍してても腐ります。生ゴミの腐った臭いがしてきたら注意!

危うく死掛けました。私が…

 

乾燥エビ クリル

 

アロワナスティック
チョコベビーという菓子と同じ大きさ

 

 

餌付け棒:ホームセンターで売ってる一番細い針金を竹串に巻きつけ、針金の先に乾燥エビを突き刺して使用します。針金を使う利点は、自由に餌を動かせること。ミノカサゴなどの魚食性の魚は動くものを餌として認識します。ある程度は餌の形も見ているようですが、針金がついているくらいはあまり気にしていないようです。最初は細い釣り糸に餌を括り付けたりしていましたが、うまく操ることができませんでした。

 

コツは、餌を岩などに這わせるように動かせること、十分に飢えさせる事です。

 

今は餌付け棒は既に無用となり、ミノカサゴは上から餌が落ちてくるのを待ち構えています。慣れて寄ってくる様子はとても愛らしいのですが、刺されるのは怖いので、できれば近づかないで下さい。と頼みたくなります。マジで危ない。